犬の胆嚢粘液嚢腫について|健康診断で偶然見つかる場合も

2023年11月29日 | 消化器科

獣医師を目指す皆さんへ。今回は犬の胆嚢粘液嚢腫について詳しく解説します。
肝臓で生成された消化酵素は胆嚢に蓄積されて、濃縮され胆汁となります。そして、必要に応じて消化管内に排泄されます。 
通常、胆汁はサラサラした状態ですが、胆嚢粘液嚢腫では粘度が上昇しゼリー状になり、胆嚢内に滞留することになります。 この状態が胆嚢粘液嚢腫です。

無症状の場合もあれば、胆管炎や胆嚢破裂など重篤な状態を引き起こすリスクもあり、特に胆嚢破裂をした場合、すぐに緊急治療をしても亡くなってしまう場合もあります。

本記事では、犬の胆嚢粘液嚢腫について解説し、治療や予防方法についてもお伝えします。

原因


具体的な原因は未解明ですが、高脂血症の傾向があり、好発犬種としてはシェットランド・シープドックや、アメリカン・コッカー・スパニエルミニチュア・シュナウザーなどが多いという意見もあります。

また甲状腺機能低下症や副腎皮質機能亢進症(クッシング症候群)との関連疑われています。

症状


無症状で健康診断や他の病気の検査時に偶然見つかる場合もあれば、黄疸、嘔吐、下痢、食欲不振などの症状が見られる場合もあります。

最も危険なのは胆嚢破裂が起こり、それに関連して重度の腹膜炎や膵炎が発生することです。この場合、激しい痛み、発熱、ショック症状などが見られます。

診断方法


胆嚢関連の疾患の診断には主に以下の二つの方法が用いられます。

超音波検査:胆嚢内の異常な粘液の蓄積を確認。キウイの輪切りのような陰影が特徴的。この特徴的な所見は、この疾患の診断基準となる。

血液検査ALP、GTP、コレステロール、血清総胆汁酸、ビリルビンの値に注目。特異的な所見はないが、これらの値の上昇が見られることがある。

治療方法


外科手術で胆嚢の切除が基本となります。しかし、年齢や体調、基礎疾患の有無によりリスクが異なるため、場合によっては内科治療や基礎疾患の治療を優先する場合もあります。

また、胆嚢破裂時には非常に危険な状態のため、緊急手術が必要です。重篤な腹膜炎や膵炎のリスクを伴うため、迅速かつ慎重な治療が求められます。治療の甲斐なく亡くなってしまうことも少なくありません。

予防


明確な予防法はないものの、定期健診による早期発見が重要です。症状が現れにくいため、定期的な超音波検査などを通じて、異常の兆候を見逃さないようにしましょう。

この記事では、獣医師として胆嚢粘液嚢腫の診断と治療に必要な基礎知識を解説しました。獣医学の世界では常に新しい発見がありますので、最新の情報を積極的に学び、動物たちの健康管理に役立ててください。

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