犬の臍ヘルニアは、お腹の臍(へそ)の下にある筋膜が閉じずに腹腔内の脂肪や臓器の一部が出てきている状態のことです。
本記事では、犬の臍ヘルニアの症状、診断方法、治療方法についてそれぞれ解説していきます。当院でも多くの症例がある疾患ですので、実際の診療をイメージしながら、内容を確認していきましょう。
犬の臍ヘルニアとは
犬の臍ヘルニアは、お腹の臍(へそ)の下にある筋膜が閉じておらず、腹腔内の脂肪や臓器が体外に脱出している状態のことです。
先天性の疾患であることが多く、原因として遺伝性が関与しているとも考えられており、特に小型犬には、頻発する病気です。
後天的には、事故などの強い衝撃が加わったときに臍の部分の腹壁が空いてしまうこともあります。
以下は当院で撮影した臍ヘルニアの写真です。赤枠で囲った部分にしこりのようなものができているのがわかります。
犬の臍ヘルニアの症状について
犬の臍ヘルニアの症状は、脂肪組織が脱出しているのみの場合、無症状のことが多いと言われています。
しかし、ヘルニアの内容物が腸管である場合には、腸管の通過障害や壊死が引き起こされることもあります。
また、血管を含む組織が脱出した場合には、出血や鬱血を生じて強い痛みを伴うこともあるので注意が必要です。
犬の臍ヘルニアの診断方法
犬の臍ヘルニアの診断では、触診によりヘルニア内容物が腹腔内に戻るかどうかを確認します。
もし、押しても腹腔内に戻らない場合には、嵌頓(かんとん)と呼ばれる状態になり、ヘルニア内容物の閉塞や壊死などが起こる可能性もあるので注意が必要です。
また、レントゲン検査や超音波検査などの画像診断により、ヘルニア内容物が脂肪組織か臓器かを判断していくことも診断を行う上で重要です。
犬の臍ヘルニアの治療方法について
犬の臍ヘルニアが無症状であり、ヘルニアの大きさも小さい場合には、手術せずに経過観察を行うこともありますが、避妊去勢手術時に一緒に整復すると麻酔をかける回数を抑え愛犬への負担を軽減できます。
そのため、未避妊・未去勢の若齢犬では、避妊去勢手術時に一緒に整復してあげると良いでしょう。
犬の臍ヘルニアでヘルニアが大きく、痛みなどの症状がある場合には、緊急手術が必要な場合もあります。
ヘルニア内容物が臓器であることもありますので、手術を行う際には、臓器を傷つけないように慎重に行うことが大切です。
さらに避妊手術後の筋膜縫合をしっかりと正確に行わなければ、臍ヘルニアを起こす可能性があるので注意が必要です。
まとめ
犬の臍ヘルニアは、無症状のケースも見られますが、ヘルニアが原因で大きく臓器が脱出している場合には、痛みなどの症状も出てきます。
現段階では無症状でも、時間が経つと症状が出てくることもあるので避妊去勢手術や何らかの麻酔をかけるタイミングで整復してあげるとよいでしょう。
また、開腹手術を行う際には、しっかりと筋膜を縫合して腹腔内の脂肪や臓器が出てこない状態にすることが重要です。
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