犬のチェリーアイは、瞬膜(第三眼瞼)腺脱出とも呼ばれ、目頭の部分に赤色の結節が突発的に認められる状態です。
放置しておくと、乾性角結膜炎を引き起こす可能性があるため、治療が必要です。
本記事では、チェリーアイの症状や好発犬種、治療方法などについて解説していきます。
症状
犬のチェリーアイでは、下の画像のように目頭の部分に突如として赤色の結節がみられます。
これは、瞬膜が脱出した状態であり、発症後数日は、脱出と消失を繰り返します。
他にも、以下のような症状がみられることがあります。
・目の充血(結膜炎)
・目やに
・粘膜の出血
進行するとさまざまな併発疾患が認められる場合もあるため、注意が必要です。
症状が進行した場合
犬のチェリーアイが進行した場合、以下のような症状がみられます。
・涙液の量が減少し乾性角結膜炎になる
・瞬膜内の軟骨が変形する
・角膜炎、結膜炎を発症する
瞬膜腺は、涙の約30%を産生しており、目に潤いを与える重要な組織です。
涙は、眼球を外界からの刺激から守るために重要な役割を果たしています。
チェリーアイになると、涙を排出する瞬膜腺の機能が低下するため、外界からの刺激を受け角膜炎、結膜炎などを発症します。
放置していると最終的には、脱出した状態のままになり、乾性角結膜炎になることもあるため早期の治療が必要です。
原因
犬のチェリーアイの原因については、明確にはわかっていません。
高齢犬では、眼窩の腫瘍などの疾患が隠れている可能性もあるため、他に疾患が隠れていないかどうかしっかりとチェックしましょう。
診断方法
犬のチェリーアイの診断は、目頭の部分の瞬膜脱出を確認することにより行います。
特徴的な見た目のため、診断に困ることは少ないでしょう。
しかし、腫瘍や奇形などの可能性もあるため、しっかりと観察し診断を下す必要があります。
好発犬種
好発犬種は以下の通りです。
・アメリカン・コッカー・スパニエル
・イングリッシュ・ブルドック
・ラサ・アプソ
・ボストン・テリア
・シーズー
・ビーグル
・ペキニーズ
特に4週齢〜2歳の若齢犬でよくみられます。
上記の犬種の眼科疾患を診察する際には、注意深く観察しましょう。
治療は、内科的治療と外科手術に分かれます。
治療法
■内科的治療
瞬膜の脱出が一時的なものであり軽症の場合には、点眼薬や内服薬を投与する内科的治療を行うこともあります。
瞬膜の炎症を抑え、元の位置に整復します。
しかし、再発を繰り返す場合には、外科的な処置をしなければなりません。
■外科手術
外科手術では、脱出した瞬膜部分を元の位置に整復し、再発しないように固定する方法が用いられます。
瞬膜腺は涙を産生する組織であるため切除すると乾性角結膜炎になってしまうことがあります。
そのため、瞬膜腺の全切除は行ってはいけません。
外科手術には、ポケット法とアンカリング法があります。
・ポケット法:瞬膜腺脱出部周囲を切開しできた空間に瞬膜腺を入れて縫合する
・アンカリング法:瞬膜軟骨や周囲組織に糸をかけて、脱出した瞬膜腺を元の位置に戻す
手術前には生理食塩水で洗浄し、点眼麻酔や局所麻酔で疼痛管理をしっかり行いましょう。
痛みによって手術中に動物が動くと、眼球を傷つける恐れもあります。
外科手術をした場合でも、乾性角結膜炎になったり再発したりする可能性があるので、術後の経過観察もしっかり行いましょう。
また、術後は目に触らないようにエリザベスカラーを装着し、目薬の点眼を行う必要があります。
下の画像は当院におけるチェリーアイの術後の写真です。先ほどの目頭が赤く結節した写真と比べて、赤色の部分が目立たなくなっていることがわかります。
犬のチェリーアイの原因は明らかになっていない部分が多く、予防することは困難です。
予防方法
なるべく早期に発見し、治療を行わないと結膜炎、乾性角結膜炎を引き起こすこともあるため注意が必要です。
若齢犬や好発犬種を診察する時には、目の状態もしっかりと観察しましょう。
まとめ
本記事では、犬のチェリーアイの症状、原因、治療方法について解説しました。
チェリーアイは、診断に困ることは少ないものの、手術には繊細な技術が必要です。
放置していると、乾性角結膜炎が進行するため早期に治療を開始しましょう。
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参考文献
獣医モデルコアカリキュラム眼科学 p71