獣医師を目指す皆さんへ。今回は犬と猫の横隔膜ヘルニアについて詳しく解説します。横隔膜ヘルニアは、横隔膜の損傷により、腹腔内の臓器が胸腔内に侵入する病態を指します。
これは主に外傷、特に交通事故や落下事故によって引き起こされます。先天性のケースも存在し、犬より猫に多く見られます。
本記事では、犬と猫の横隔膜ヘルニアについて解説し、治療や予防方法についてもお伝えします。
原因
横隔膜ヘルニアは、多くが外傷によるものです。特に交通事故や高所からの落下により、横隔膜が損傷し、肝臓、胃、腸管などの腹腔内臓器が胸腔内に侵入します。
先天性の場合、腹膜心膜横隔膜ヘルニアと呼ばれる状態が多く見られます。この状態では、心臓を取り囲む心嚢(心臓を包む袋のようなもの)とつながっている心嚢内に臓器が入り込み、心臓を圧迫します。
症状
胸腔内に侵入した臓器の量や種類により、症状は異なります。
肺や心臓が圧迫されると呼吸困難や低酸素による舌の青白さが見られます。
胸腔内に消化管が侵入すると、食欲不振や嘔吐などの消化器症状が出ることもあります。
症状が進行するとショック状態になる場合もありますが、無症状で経過することもあります。
診断方法
診断は画像診断に依存します。レントゲン検査や超音波検査を用いて、腹腔内臓器の胸腔内への侵入を確認します。
状況によっては、血液検査を含む他の検査も必要になる場合があります。
治療方法
横隔膜ヘルニアの治療には、主に外科手術が用いられます。手術では横隔膜を修復し、腹腔内の臓器を正常な位置に戻します。ただし、ショック症状を起こして手術に耐えられない可能性がある場合は、まずは状態の安定化を優先し、その後手術を検討します。
また、無症状の場合は手術を行わず、経過観察を選択することもあります。
予防
交通事故や落下事故を防ぐことが最も効果的な予防策です。犬の場合は散歩時のしつけが重要で、外出時は飼い主様の注意が必要です。猫に関しては、室内飼いの徹底と、室内での落下事故の防止に努めることが推奨されます。
横隔膜ヘルニアは、特に緊急性が高く、迅速かつ的確な治療が必要とされる病態です。外科手術は高度な技術が求められるため、獣医師としての熟練度が試される場面でもあります。外科的アプローチの際には、周囲の臓器に与える影響や、術後の合併症にも注意を払う必要があります。
また、獣医師としては、予防医療の重要性を飼い主様に伝え、適切な飼育管理を促すことも大切です。特に、交通事故や落下事故の予防策として、飼い主様への教育や啓発が必要です。散歩の際にはリードを使用すること、室内での安全な環境作りなど、日々のケアがこれらの事故を防ぐ鍵となります。
獣医師としてのキャリアを積む過程で、犬と猫の横隔膜ヘルニアに対する知識と技術は、動物たちの生命を救うために不可欠です。皆さんがこれらの知識を深め、実践的なスキルを身につけることで、多くの動物たちの健康を守ることができます。
他のヘルニアの疾患については以下のページでも解説しています
■犬の臍ヘルニアについて
■犬の鼠径ヘルニアついて
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